坂本龍太朗のワルシャワ通信(6月29日〜7月5日)

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6月29日

最近はまた、ウクライナへの人道物資購入と同じだけ、ポーランド国内避難民の生活支援を行っている。今回購入したのは電気コンロ。ポーランドでは避難先として一般家庭を見つけるのが大変難しいため、家庭ではない施設に避難することもある。そうなるとそこには生活に必要な洗濯機などがないケースもあり、このコンロもその一環だ。
屋根があって、寝る場所があればいいでしょと言われるかもしれない。しかしある程度普通の生活ができなければ避難疲れがたまり戦地への帰国を選択されかねないし、実際にそういうケースもよくある。生活に必要な電化製品を購入することで、しかもそれを支援として購入していることを見せることで、あえて言うならば彼らを戦地に放り出さないための「しがらみ」を作っているようにも正直思う。たとえそうだとしても、やはり命の危険がある祖国にはまだ今は帰ってほしくないとうのが私の本音。もちろん最後は彼らが決める。でも、最終的に戦争が続いている祖国に帰国したとしても、安全な生活が一日でも長ければそれは価値がある事だと思う。

・一昨日はウクライナに対し、ベラルーシなどから約50発ものミサイルが各地に打ち込まれ、ショッピングモールなどが破壊された。そこでは民間人が犠牲になっているが、彼らの中には戦争が終わっていない状態で帰国したような人もいるだろう。そういったニュースが入ってくるからこそ、ここで支援をやめて彼らが帰国しなくてはならない状況になってしまい、万一ふるさとで彼らの身に何かがあったら、私は一生後悔すると思う。

6月30日

・ウクライナ娘が絵を描いてくれた。黄色い太陽、赤い太陽は見てきたが、白い太陽は初めてだ。キャンバスと絵の具や筆の値段はたかが知れているかもしれない。しかし子どもはそれをお金では計算できない価値に簡単に変えてしまう。この娘を見習って、私もしっかり日本からいただいている支援金を、その価値以上の支援としてウクライナに届けていくことに頭を使い続けたいと思う。この娘もポーランドに避難してきてから、あっという間に4か月経ってしまった。

7月1日

・ここ数日は夏日が続いています。ポーランドの夏は過ごしやすいイメージがありますが、残念ながらここ数年は30度越えはよくあることで、今日も34度まで上がる予報です。そこで必須になるのが今回買った支援物資の扇風機です。ウクライナのみなさんは狭い部屋に何人か住んでいるケースも多く、ポーランドの建物ではクーラーはまだ日本ほど普及していません。クーラーとは違い工事もいらず、安く、組み立ても簡単な扇風機。もちろんクーラーほど快適な環境は作れませんが、扇風機は別の部屋に移動させることもできるなどメリットもあります。
・ちなみに、ウクライナの首都キーウも昨日と今日は30度を超えています。

7月2日

・今回は少し聞きずらいかもしれませんが、現実をありのままお伝えします。それは今回購入した支援物資である日産NAVARAが全てを物語っています。まず、支援を続けてきて思うことは、日本のみなさんの関心を集めるためならば、もっと別のやり方があるということです。例えば子供たちの写真を毎日出したり、避難民の生活の大変さを語って同情を得ようとしたり。しかしそれはプライバシーの問題などもありますし、私はあまり写真を撮りませんし、本当に必要な支援は正直写真になりません。

・「絵になる」支援はほんの1部だということです。今回は珍しく、ある意味絵になる支援報告になりますが、こういったものは支援の数パーセントにしかすぎません。
・2つ目の現実として、支援を進めるために、ウクライナの民間人をより多く支え、命を守るためには軍との協力なくしては難しいという現実です。軍との協力なんてと拒否反応を示される方もいらっしゃるかもしれませんが、実はどこにどんな民間人がいて、彼らが何を必要としているのか、一番情報を持っているのは軍です。また、民間人を避難させるのも基本は軍です。アゾフスターリでも、セベロドネツクでも、軍が防衛拠点とした場所に多くの民間人が避難してきていることからも、それは明らかなことです。そこが最も安全だからです。基地がなければ攻撃されないというのは、ウクライナを見ていれば幻想であることがよく分かります。基地がないショッピングモールでも、学校でも人が亡くなっています。

・軍からは距離を置きたいということで軍と一切接触がなければ、救える民間人の命は確実に限られます。軍を全く切り離して、できる範囲で限られた命しか救えない支援をするのか。それとも軍ともつながってより多くの民間人を効果的に救い、避難させ、可能な限りの命を救うのか。私は迷わず後者を選びます。これは必ずしも、私が軍に武器を送るというわけではありません。そもそも私は民間人で武器は買えないですし。

・今回、この車両も軍とのやり取りの中で購入しました。しかし、この車両を戦車代わりに使おうというのではありません。今、ウクライナでは車両が不足しているんです。車も壊れますし、運転手も殺害されますし、今までボランティアで運転していたような人たちもいつまでも続けられるわけではなく前線を離れるケースが多いです。これを放置すると、私がいくらこちらで物資を購入したとしても、運ぶ手段がなくなるわけです。この車両はそんな穴を埋めるため、前線で困っている人たちに物資を届けるためにウクライナ国内で使ってもらうものです。そのため中古車ですがタイヤが丈夫であること、4WDにできることなどいくつか欠かせない条件がありました。

・物資を戦地に運び、帰りはどうするのか。もちろん民間人の避難にも使われますが、亡くなった兵士の遺体を運ぶことになると思います。民間人の避難のためにはもう少し大きな車両が必要で、それも近いうちに買う必要があります。ウクライナの状況はついに、自分たちでルートを作らなければならないほど悪化していることをご理解いただければと思います。

7月3日

・ウクライナのザスタブネより感謝状をいただきました。この4ヶ月、ザスタブネがあるリヴィウ州グリニャニ市には本当に多くのものを搬入してきました。冬季には発電機やガスコンロ、避難所のためのマットレス、寝袋、キャンプ用マット、服、靴、最近はパソコンなど子ども達を支援するためのものも多くあります。グリニャニ支援は私のとって大変やりやすく、その理由は私が住んでいる郡と姉妹都市関係にあるためです。そのため戦前から培ってきたネットワークが使えますし、信頼もゼロから作る必要がありません。そういった地盤があり、郡と協力してバスで運び込んだこともあります。過去3回の搬入は、個人的なコネでこちらに避難しているザスタブネ出身の母娘の親族の車を使わせていただいています。

・長い間関係があるとはいえ、実は私はまだ1度もグリニャニ市にお邪魔したことはありません。しかし、ウクライナの中で1番知り合いが多く、関係が深く、この4ヶ月はまるで以前住んでいたことがあるかのような気持ちで支援を続けて来ました。
・もちろん、ザスタブネに送ったものは全てがザスタブネで使われるわけではありません。そこを拠点にし、さらに東部のさらに物資が必要な人々にも届けられています。

7月4日

・延長コードを三本購入。これで7人分の生活が多少なりとも楽になる。今まで電化製品を使う時、わざわざコンセントの近くまで行ったり、他の人が使っている時は待たなければならないような状態があった。しかし、避難生活=不便が当たり前と基本的にみな思っているし、安全な住む場所があるだけましだし、かつ近日中にふるさとに帰りたいと思っていれば、延長コードがなくても頑張ろうと考える。私達も例えば旅行に行った時、ホテルで便利のためにわざわざ街に行って延長コード買ったりはしない。
・しかし、その1時滞在が4ヶ月も超えるとなぁ。。。

7月5日

・先日こちらに呼び寄せたウクライナ母娘5人のための自転車をついに揃えることができた。新たに購入した中古自転車は2台。1台は3月初めに避難所の常備自転車として購入したチャイルドシート付きのもの。1台は研究所の職員からもらい、最後の1台は以前私の家にいたハイキューからの息子のために購入したもの。自転車は全て中古だが、鍵とヘルメットは新しいものを購入した。
・子ども達には研究所施設内で車がなくても、必ずヘルメットをかぶって自転車に乗るように言っている。

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