坂本龍太朗のワルシャワ通信(6月1日〜6月7日)

6月1日

今日、ポーランドでは子どもの日。支援活動の前に朝小学校に来賓として参加。子ども達のために先生が劇を準備したり、みんなで歌ったり、子ども達はとても楽しい時間を過ごしていた。ウクライナから来ている子ども達もずいぶん馴染んでおり安心した。
そんな中、びっくりで巨大な名前が書かれたジンジャケーキをプレゼントされた。理由はこの学校を拡張するための国家予算確保のため、今まで尽力してきたことへの感謝とのこと。見ただけで、作るのにとても時間がかかったことが分かる。こちらからも感謝だし、そもそも学校が大きくなることは、今まで午前の部と午後の部に分かれて登校しなければならなかった子ども達の学習環境を改善し、それによって親御さんの普段もずいぶん軽減できる。それよりなにより、新しい学校には「日本ホール」ができるのだから、私としてもあり難い限り。

・本日午後、日本は長野県から車椅子介助関連会社の「JINRIKI」さん一行がいらっしゃいました。戦争で負傷し、車椅子生活になってしまった人へのサポートはもちろん、障害があることで避難できずにいる人たちに届ける器具についての話し合いです。
・車椅子を人力車のようにすることで移動しやすくする器具は画期的で、日の丸を背負ってウクライナ支援をしたいという想いには深く共感しました。

・まずは今後、車椅子生活者をどう支援していけるのかを考えるため、今回頂いた器具をウクライナに送り様子をみます。
・災害や戦争で避難を考える時、避難困難者として避難「しない」のではなく「できない」人が2割ほどいるそうです。私たちは目の前にいる避難「できた」人だけではなく、見えないが避難「できない」取り残された弱者にもしっかり支援に手を入れていかなければなりません。

更埴子ども劇場リョウタロウ応援隊より、第二段階の支援金をいただきました。今月11日にウクライナに搬入する物資購入に充てさせていただきます。
引き続き、6月中はウクライナの子ども達に教育機会を提供するためのクラウドファンディングを進めております。6月中のご支援はこちらにいただけると助かります。どうぞよろしくお願いします。
https://readyfor.jp/projects/ryoutarosakamoto-ukraine

・日本の今朝7時28分~7時40分まで、NHKラジオにお邪魔します。こちらの時間では0時28分からです。
・せっかく夜時間ができたので、ウクライナに送る絵本の翻訳をしています。ただ、私がやる翻訳は本当に簡単なものだけで、それ以外の送る本はウクライナ人で日本語が分かる方にお願いする予定です。

6月2日

・来週末、ウクライナに搬入するための物資が届き始めています。支援物資購入で大変なのは納入日がウクライナ搬入日以前であることです。それを超えてしまうと今回の搬入には間に合わず、次の搬入になってしまう。それだけ必要物資が届くのが遅くなるということです。ウクライナから来る支援物資依頼リストを確実に達成できるかできないか、そのための物資確保はそう簡単ではありません。

・今回の支援物資の中には携帯電話も入っていました。携帯電話が必要な理由はそもそも多くの携帯が壊れてしまっていたり、それによって連絡手段がないという人がたくさんいるということもありますが、それよりも「戦争犯罪の証言を録音録画する」というのが主な使用目的だと聞きました。そのため、携帯を買う際に大切なことは機種ではなく、柄でも形でもなく、内部メモリーの容量です。今回は128GB以上あるもので1台1万円前後の物を探し、7台購入しました。1台いい物ではなく、数も大切なので7台全て中古です。もちろん、日本製のSONYも意識的に入れました。

6月3日

・昨日支援物資としていただいたJINRIKIの車椅子補助器具の受け渡しです。在ポーランド日本国全権大使より朝お電話いただき、その数時間後に面会が実現しました。面会中に、ワルシャワ近郊で最大の特別擁護学校であるイェジ・ストゥシャウコフスキ記念特別養護学校の校長に電話し面会依頼。今日はそちらに行っていただきました。ウクライナ支援の輪が広く確実に、そして温かく広がっていることに涙が止まりません。人を殺す人もいれば、人を助けるために駆け回る人間もいる。これが現実です。

・三菱商事ワルシャワ支店を訪問。ここにキーウ支店から避難してきていらっしゃるみなさんの中に、日本語が達者なカチャさんがいる。彼女にウクライナの子供たちに送る絵本の翻訳を依頼した。先日届いた絵本が詰まったダンボール3箱から、比較的絵が多いものを選び1箱そのままお願いした。翻訳を快諾していただいたことには本当に感謝だし、仕事がある中私の支援に付き合っていただけることにも感謝。
・しかしカチャさんからは私がウクライナ支援を続けていることを逆に感謝された。依頼して負担をかけて、なのに感謝されるのはと思うかもしれないが、やはり感謝で人は繋がり、支援も繋がるんだと思う。

・ウクライナは血で戦い、私たち外国人はお金と物で戦っている。だから感謝するのはこっちだと常に思ってきた。ただ、私も1度だけウクライナ人に私自身に感謝しろと伝えたことがある。それは前線にいる兵士や民間人のみなさんに物資を送った時のことだ。向こうから感謝が来たのでこちらはこう返した。
・戦地にいるあなたへ。私に感謝してほしい。でもそれは今じゃない。平和になったら「直接ここに来て」感謝してほしい。だから絶対に死ぬな。何がなんでも生きのびろ。メールじゃなくて電話じゃなくて、人伝じゃなくて、自らポーランドに来て感謝を伝えるという約束をしてほしい。その時は一緒に寿司を食べて平和を祝おう。

・実際に動くということを実践なさっている日本のみなさんがいらっしゃいます。こちらに来て、充実した活動をなさっているみなさんは「強い信念」があり、「助けるための具体的な施策」を持ち合わせ、さらに「ある程度言語の問題をクリア」している方々だ。この3点のどれがかけてもポーランドに来てから路頭に迷ってしまうことになると思う。

今まで私が長らく付き合っているこの特別養護学校。今回は直接同行することができずお繋ぎしただけだが、こういった報告写真を見ると今まで私がポーランドで培ってきた人間関係は決して無駄ではなかったと思うし、こういう危機の時にその真価が現れるように思う。

6月4日

・日本人学校から連絡あり。私宛の小包がいくつか届いているとのこと。このように日本人学校に迷惑をおかけする事はある程度想定されていた。というのも日本の報道で「日本語学校教頭」ではなく「日本人学校教頭」と紹介されるミスが何度かあり、それを見た方が支援にと日本人学校に物資を送ってしまうだろうと思っていたからだ。

・今回、その荷物を受け取りにワルシャワへ。家に帰って開けると中には子供用のリュックサックや歯磨き、タオル、ぬいぐるみなどが入っていた。リュックサックは「避難所などを点々とする子供たちへ」と書かれており、手作りのぬいぐるみにはウクライナの旗が。しっかりとウクライナの子供たちに届けたい。

最後に。受け取り、保管以外にも関税の負担まで日本人学校の先生が持ってくださった。改めて感謝したい。

・先月末、ワルシャワにて行われたウクライナ人たちによるデモ行進。訴えたことは「ポーランドへの感謝」横断幕には赤文字で大きく「ありがとう」と書かれている。行進には在ポーランド・ウクライナ大使も参加。
・Marsz wdzięczności w Warszawie
・Foto: Twitter/ADeshchytsia

6月5日

・地域政府から「感謝状」をいただきました。ありがたい限りですが、最初の感想は「まだ何も終わってないし、まだ何も達成していないのに」ということです。大会で初戦の試合中に賞状をもらった気持ちです。記念品として傘や懐中電灯などもいただきました。これも嬉しいですが、まずは「これ、ウクライナに送る物資に追加できるか」について考えさせられました。恐らく懐中電灯は結構役にたつと思います。品を選んでくださった方やその関係者がこの投稿を見ているかもしれないと分かった上で、まずは感謝があると断った上で、google翻訳がうまく機能せず伝わらないことを多少願っています。

・妻はなんで私の名前も?と言っていますが、妻も今回の支援では多くのところで主体となって活動していますし、私の活動にも協力してくれており不思議はありません。ただ、支援の分、子供たちに割く時間は減りますから、彼らにも結構我慢してもらっています。子供たちの名前はもちろんありませんが、何らかの形で将来労ってあげたいと思います。
・今回は「感謝状」とは書いてありますが「これからも頑張れ状」と忖度して受け取ります。ありがとうございます!
・Tシャツはこの感謝状とは関係なく、ウクライナの友人からいただきました。

6月6日

・支援物資が続々と届いています。これらはそのままウクライナに送るわけにはいきません。そもそも見ただけでは中に何が入っているのか分からないものばかりです。そのため、まずは全て開け、中身の確認。その後ダンボールに入っている物と数をウクライナ語で記入します。その後再びダンボールを閉じてようやく搬入準備が整います。

6月7日

・携帯式充電器が9台届きました。これはソーラーパネルが内蔵されているため、簡単に電気が作れます。ライトとしての機能はもちろんですが、最も重要なのは携帯などを充電することです。ロシア軍によってインフラが破壊され、電気がない地域に住んでいる人たちがいます。例え家族が海外に逃れていたとしても、スマホが充電できなければ連絡を取ることさえできません。また、地下で避難生活を送っている、つまりソーラーパネルの機能が役に立たない場所にいる人たちにとっても、この充電器は手動でも電気を起こせるので役立ちます。便利ですが、1台8000円程度はします。

・最近はウクライナ国内への支援に重点を置いていますが、ポーランド国内のウクライナのみなさんの状況が改善しているわけではありません。ウクライナから来てこちらの学校に通っている子ども達も現在でももちろん言語的な壁にぶつかり続けています。
・住居の問題もあります。ウクライナ人がアパートを借りようとしても、言語や金銭面の壁だけではなく、期間の問題もあります。戦争がいつ終わるか分からないため、どれぐらいの期間賃貸すればいいのか決めるのが難しく、とりあえずは数カ月というのが多くの皆さんの希望です。

・しかしアパートを借りる場合には最低でも1年というのが通常で、そこまで長く借りる金銭的余裕がある人はそんなにいません。私ができる支援はアパートを探したり、保証人になったりすることですが、それも限界があることを認めなければなりません。最終的にアパートが見つからない場合は日本に避難してもらうことも選択肢として残しておかなければならないと考えています。

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