坂本龍太朗のワルシャワ通信(7月13日〜7月17日)
7月13日
次回ウクライナに送り込む支援物資の中には、今回初めて購入したものがある。それがこの水虫治療薬だ。なぜこのようものが求められているのかというと、ウクライナでは男性用の服はもちろん靴も靴下も極度に不足している。靴と言っても普通の夏靴ではなく、瓦礫の上で作業ができる、森の不安定な道を歩けるような丈夫な靴だ。特に欧州基準で41以上の靴が足りない。
・足りないとどうなるか。もちろん靴下は何日も洗わず使わなければならないし、靴だって底が薄くなって滑りやすくなったり、穴が空いたりしても履き続けなければならない。この状況はすぐには改善できない。注文出来る量にも、予算にも、そして時間にも、運び込む車のスペースにも人員にも限界がある。だからこんな水虫治療薬が大量に必要とされているのだ。
ふと、5月にサンダル一足だけでポーランドまで逃げてきたおじさんに出会った日のことを思い出した。
7月14日
本日搬入する医療物資。運送時のスペースを確保するためバッグと物資一式は別で購入し、ダンボールも別々。 これで救われる命が少しでも多くなることを祈る。
7月15日
・国境での審査が7月から厳格化されている。ウクライナ戦争でウクライナには色々な物資などが様々なルート、国、団体、個人を通して入っているが、中にはこの機を利用して儲けようとか、支援物資と偽って外国から持ち込んだものを関税などを払わずに売りさばいたりするケースが散見される。
・私の独自ルートでは必ず信用確認のため書類を準備している。今回はリヴィウの友人に届ける物資もあったため書類は2点。先程無事にウクライナには届いたという報告がありほっとしている。
7月16日
・物資が届いたという連絡がウクライナから届く度にほっとする。今回は今までずっと繋がりがあったが、実際に物資を送ったことがなかった友人がいる。別の友人にウクライナまで他の物資と一緒に持って行ってもらった。
・最初に受け取ってくれたのはリヴィウ市議会副議長のヴィクトリアさん。届いたという報告と共に、彼女の笑顔を見てさらに安堵感を得た。とりあえず一段落。今日からは次の搬入に向け準備を始める。
・次回の大きな支援内容は、前線から民間人を避難させるためのミニバス(バン)を購入するところから。そこにもちろん支援物資を積み込み、車両ごとウクライナに送る。
7月17日
・今までウクライナ支援をずっと共に行ってきた友人の1人オルガ(私の左)が入院してしまった。兄が戦場におり、ここ4ヶ月ずっとストレスと戦ってきた結果、ここへ来て一気に心の負担が体に出てしまった。それでも彼女は病院で点滴を受けながらもウクライナ支援について考え、彼女の夫や私は今までと変わらずに支援を進めている。とにかく彼女には今ゆっくり休んでもらいたいが、ウクライナの戦争が終わらなければ決してストレスはなくならない。彼女の家には子供たちが何人もいる。ウクライナでお父さんが戦っているのでたった1人で避難してきている子供もいる。
・オルガが支えているものはとても多い。ウクライナ支援は今必要。最大限必要。広く深く長く必要。ただ支援する側が倒れてしまうと支援を必要とする対象が1人増えることになってしまう。
・彼女の分も支援を倍増させたいが、自分の健康を考えるとそれもちょっと考えなくてはならない。とはいえ私には彼女のように、いつ戦場で兄弟をなくすか分からないという果てしないストレスはないのは事実。
・とにかく、彼女の回復を祈るのみ