坂本龍太朗のワルシャワ通信(9月14日〜9月19日)

9月15日

・リヴィウ州にあるザスタブネ小学校の先生からとても手の込んだプレゼントをいただいた。一見すると刺繍のように見れるが、なんと全てビーズでできている。
・それだけではなく、描かれているのはウクライナの地図だ。これは相当時間がかかるだろう。
・想像に過ぎないが、これを作りながらウクライナの先生はずっと祖国の平和を考えていたと思う。

・よくウクライナ人から、そしてポーランド人から、はたまた日本人からも「なぜこんなにウクライナを支援し続けるのか」と聞かれることがある。その質問の奥には「義務はないのに」とか「得はないわけで普通の生活をすればいいのに」といった気持ちが込められているようにも思う。そんな中でも「なんで日本人が」とよく言われる。しかし私から見れば「日本人だから」なのだ。今までずっと歴史を学んで来たが、第二次世界大戦前までウクライナ西部はポーランドだった。

・その頃の旧ポーランドは日露戦争でいかに日本を支えたか。前線に送られたロシア軍の中のポーランド人たちの士気の低さ。そして日本への投降と日本による特別な庇護。西部でも明石元二郎と協力関係にあったポーランドはロシア軍を西部に引き付けた。それは東部戦線で日本有利に働いた。第二次世界大戦でもポーランドと日本が水面下でいかに繋がっていたことか。それがいかに日本に有益だったか。

・それらを知るにつけ、旧ポーランドであるウクライナ西部の人々が日本に対して果たした役割は大きい。ポーランド孤児の中にも今のウクライナ出身者は多い。
だから、日本人だから、今恩を返すつもりで支援しなければと思う。ただ、こういったことをウクライナやポーランドの皆さんに説明するのは簡単ではないし、まずは日本語で発信しようと思う。

9月16日

・ウクライナへの搬入作業は簡単ではない。一度にできるだけ多くの物資を運ぶため、どう詰め込むかはもちろん大事だ。そして毎回、運びたい物資を全て持って行けるわけではない。そんな状況では物資に優先順位をつけなければならない。大きさと優先度を考え車に積んでいく。緩衝材などは必要最小限に。隙間には缶詰などの食料品を小分けにして入れる。今回はウクライナの子どもたちにも搬入を手伝わせた。子どもたちは物資の重みをどう感じているのだろう。

できるだけたくさん入れたい。それだけ多くの人に希望を与えることができる

 

9月17日

・我が郡のウクライナにある姉妹都市グリニャニで避難所開設の準備が進んでいる。私の元にその避難所で使うための椅子40脚、机20台、プリンター、スクリーン、パソコン、ベビーベッドなどの支援依頼が来た。
・買っても良かったが、今回はワルシャワ日本語学校の家具をそのままウクライナに引き渡すこととする。学校は今学期もオンライン授業が決まったため、今後もしばらく対面授業は行われない。であればウクライナで使ってもらった方がいい。ベビーベッドは学校にはないので、我が家のものを寄付する。

・支援物資は現在、市民体育館に置かせてもらっている。リストを全て集めるには家や学校と避難所を何往復もしなければならないが、一部は郡の関係者が手伝ってくれた。現在まで約9割準備完了。来週中にはウクライナに送りたい。

とにかく、戦後復興が始まる時までより多くの命をこの世に残すこと。日本は常に彼らと共にある。子どもたちが抱えている絶望を希望に。

9月18日

・ウクライナから報告と共に写真が届く。よく見ると先生たちも子供たちもウクライナの刺繍が入った服を着ている。ここにいる子供たちの中には、父親や兄が祖国防衛のために前線に行っているケースも多々ある。
・この学校の先生は、今まで日中に5回、学校の上空をミサイルが飛んでいくのを見たそうだ。ミサイルは深夜や早朝に撃ち込まれることが多いため、日中というのは珍しい。

とにかく、戦後復興が始まる時までより多くの命をこの世に残すこと。日本は常に彼らと共にある。子どもたちが抱えている絶望を希望に。

9月19日

・子どもたちは国籍を問わず本当に純粋だ。生意気だと思ってもその裏には愛されたいという気持ちをいつも持っている。私の近くにいるウクライナの子どもたちは9月から新学期が始まり日々オンライン授業のためパソコンに向かっている。今までは行ける時に支援に行っていたが、最近は授業の邪魔にならないように訪問時間にも気を使う。そして訪問前に事前確認。
・「授業何時に終わるの?」
・「12時」
・「じゃあ12時ちょっと過ぎに行くよ」
・「分かった。待ってるね」

そして訪問

・「今日は授業午前中だけだったの?」
・「なんで?」
・「だって最後の授業12時までだったんでしょ?」
・「あ、あれ嘘だよ」
・「...」
・眉をしかめた私。笑顔のままの子どもたち。
・「早く来てほしかったから嘘ついたの」
・こう言われると怒る気にもならない。

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