坂本龍太郎のワルシャワ通信(8月15日〜8月22日)
8月15日
ウクライナの子の薬を買うために一人で薬局へ。通訳するより処方箋を預かって、私がひとりで行った方が時間的には楽であることは確か。
処方箋にある薬は24錠必要と書かれていた。しかしその薬は1パック14錠なので28錠で処方箋が出ていないと2パック目は売れないとのこと。再び医者に行って、処方箋を再発行してもらうか、ここでとりあえず1パック買うか選択を迫られ、とりあえず後者を選んだ。
・薬剤師と話しながら、流石にこのやり取りをウクライナの子にやらせるわけにはいかず、1人で来てよかったと思った。もちろん全ては経験なので、行かせて困り、私が通訳で入るというのもありだが、時間がないと必ずしもそういう選択肢が取れない。
・薬局にあった一般薬のウクライナ語説明書を頂いてきた。
8月16日
・今回は1番上の娘の歯医者。お姉ちゃんだから妹たちの見本になるよう、しっかり虫歯を全部治さないと、とは言いつつ歯の深刻度合いは一番低い。
・ウクライナでは過去、2回だけ歯医者に診てもらったことがあるそう。それはアメリカのウクライナ系歯医者のグループがバスで彼らの街に移動診察に来たとき。つまり、移動診断がなければ歯医者には行かないということだ。
ウクライナ人は今、世界中に飛ばされた。彼らはそれぞれの地域で学び、それを将来祖国に持ち帰って復興の力にするだろう。健康管理もそのひとつになるかもしれない。
・ウクライナに搬入するガスコンロ。今後、ザポリージャ原発の電気がロシア支配地域に奪われたり、発電量がさらに下がったりすれば、コンロの需要はさらに高くなっていくことが予想される。冬に備えて今のうちに入れておく。
・ザポリージャ原発への砲撃を巡ってはウクライナとロシアは双方を避難している。ウクライナが自国民や自国領土に壊滅的な被害を与える攻撃をするかということを考え 、またザポリージャ原発南のロシア支配地域から砲撃が多いことから、そもそもロシアはデマばかり広げてきた過去からも、実際はどうなのか想像するのはそこまで難しいことではないが。
・自宅のテラスは支援物資の一時保管所となっている。パソコンなどは室内に積み上げるが、場所もないので靴や服などは外で保管(屋根付き)。
・こうして日々積み上がり、ウクライナ搬入日を待つ物資たち。今日も届く物資を新たな仲間のように、テラスで迎えるかのように私に何かを語りかけている。早くウクライナに行きたいのか。早く自分たちの役割を果たしたいのか。多くが欧州産なのに、日の丸をつけられて、彼らも戸惑っているかもしれない。
8月19日
・ウクライナからプレゼントをいただいた。右はすぐになくなったが、左は飾ってある。というのも私は全くアルコールを飲まないからで、ウクライナの方もそれを分かった上でプレゼントしてくれる。結果として家にコレクションができ始め、なかなか見応えがあって嬉しい。
・お酒はもちろんだが、タバコ吸わない。しかし、ウクライナに物資搬入をしている友人は戦争が始まってから吸い始めたとのこと。もちろんストレスが1番の理由だが、もうひとつの理由がある。それは、ウクライナ各地で出会う人と話す時、ウクライナの男性たちはタバコを吸っている人が多く、一緒に吸うことで仲間意識が作れるからだという。
・早朝ワルシャワからウクライナ国境に伸びる高速道路脇のガソリンスタンドで落ち合った私たち。私の車から彼の車へ支援物資を詰め込むため何度かここで会っている。コーヒーを片手に彼はまだポーランドにいるにも関わらず、たばこに火をつけた。
8月20日
・ワルシャワで1番人気の日本料理店「うきうき」のオーナーである松木平さんより発電機やガスコンロをいただきました。こちらは全て、しっかりと日の丸をつけて即日ウクライナに搬入します。発電機はウクライナのカルパティア山脈近くの避難所に送られます。こちらはもともと閉鎖されていた施設ですが今は避難民で溢れており、しばらく使われていなかったために生活用品なども満足にありません。キャンプ場のような環境なので冬が心配です。
・松木さんとは10年以上お付き合いで、外国であるポーランドで起業した日本人としての先輩です。ウクライナ支援でも協力できることを日本人として誇らしく思います。
・今後も、欧州圏内からならどんな物資であろうとウクライナで役立つものは全て受け付けます。どうぞよろしくお願いします。
8月21日
・ウクライナに物資を搬入。大量の食料、ガスコンロ、パソコン、モニター、発電機、焚き木作り用のハンマー、電動ノコギリ、斧など。それに加え、今回は4人のウクライナへの帰国希望者を無料で送届ける。もちろん片道であり、ポーランドに戻る時はポーランド入国希望者を乗せる。人数と物資の関係で、今回運転するのは友人の夫。
8月22日
・今回、ベルギーから購入したのはポーランドからウクライナへ人道支援物資を搬入するためのバン。9人乗りで、物資だけではなく避難民の移動にも使うことになる。ベルギーナンバーで、ポーランド人が、日の丸をつけて、ウクライナへ今後何度も往復することになる。車の保管場所はウクライナ人の友人の家。車両はウクライナ国内では全く足りていない。戦場で走り回っていると車は本当に消耗品である。現在集まっている支援金が終わるまでに、何とかあと2台(ポーランドからウクライナへの搬入用、ウクライナ国内用)買えれば物資の搬入だけではなく民間人の強制避難ももっとスムーズに進めることができる。車じゃないけど、これからも走り続けなければならない。