坂本龍太朗のワルシャワ通信(4月11日〜4月20日)

4月11日

ウクライナの小学校で働いている先生と意見交換をしました。

ウクライナでは多くの学校が爆撃を受けており、現在学校に通って授業を行うことはリスクが高く、西部の学校であってもオンラインでの授業が行われています。
そのため、パソコンを買う余裕がない家庭の子ども達は戦争によって、完全に学ぶ機会を奪われてしまいました。
そんな子ども達に学ぶ機会を、そして世界とつながるツールとしてのパソコンを支援物資として購入しました。
全てに手書きで日章旗のシールをつけ、日本は君たちと共にあるとのメッセージをウクライナ語で入れてあります。
日本のみなさまからいただいた支援金で実現できている支援ですので、しっかり目に見える形で日本は共にあるということを示してまいります。
遠い国からの支援だからこそ、彼らの力になるはずです。

パソコンは今朝5時にウクライナに向けて出発しました。

全く罪のない子ども達ですが、彼らは予期せず将来祖国を復興するという重大な任務を負わされています。

彼らを支えることは、将来ウクライナを支えることにつながります。

子ども達の笑顔が奪われれば、祖国の復興もありません。

今後も必要に応じてこういった支援も続けていきたいと思います。

・支援を続けて一カ月以上が経ちましたが、「子ども達を元気にする」ことで「大人も元気になる」ということに確信を持てるようになりました。

・もちろん、大人への支援も必要ですが、子どもを支援するということは、間接的に、そして精神的に親を支援することにつながっています。

4月12日

・日本の報道でたまに『専門家』による驚くような解説を聞く。
・ウクライナで駅にミサイル攻撃が加えられた際にロシア語でのやり取りが紹介され、「ロシア語ですからこれは親露派勢力だと言えます」との解説を聞いて腰を抜かしそうになった。

・ウクライナ中部、東部、そして南部にはロシア語を日常的に使っている人が多く、そういった地域からも大勢こちらに避難してきている。
・彼らはウクライナを愛し、侵略者を憎んでいる。ロシア語=親露派、という考えを一般の人ならまだしも、専門家と称する者が行うのは大変危険。

今日から受け入れる母子を迎えにショパン国際空港に来ています。

ウクライナで電池が不足しているとの情報が入り、大量に購入しすぐにウクライナに送ります。どんな電池がいくつかなどは全く分かりません。とにかく色々な種類を買ったので、あとはウクライナ側で必要なものを必要な場所で使ってもらうようにします。

・パンクした自転車を修理し、使っているウクライナの友人の元へ運ぶ。

・避難民が数名住んでいる高圧物理学研究所を4日連続で訪問したが、いつの間にか日章旗が追加されていた。
・ポーランド国旗と日章旗がウクライナを囲んでいる。

・これがまさに今私が携わる支援のあり方だと感じる。

・ポーランドの支援なしでは私はウクライナに対しできることは相当限られていただろう。

4月15日

・ウクライナから来てポーランドの学校に通っているミラちゃん9歳。彼女の絵を見て一瞬息を飲んでしまった。なんと彼女の絵の右上にはロシアの旗が。。。。
正直に申し上げて私は今ロシアの旗を描けるような心境には全くないし、見たいとも思わない。もちろん旗には全く罪はないが、感情が強く強くロシアを拒否している。理論じゃなくて、法律じゃなくて、感情的にロシアをどうしても敵視してしまう自分がいる。分かっていても、そうなってしまうのが戦争。

・しかし彼女の描いたロシアの旗は、ポーランドやウクライナ、日本の旗と同じような優しさがあった。未だにこの絵を見てから、自分の中で感情の整理がつかない。

・もしかしたら彼女にはロシアに家族や親せきがいるのかもしれないし、平和なロシアに戻ってほしいという希望からロシアの旗を描いたのかもしれない。

・でも、今のポーランドではロシアの旗なんて絶対に掲げられないし、恐らく将来的にもハーケンクロイツ(ナチ党の旗)と並べられていくことになるだろう。

・絵の下にはウクライナ語で「MIP(ミール)、平和」と描かれている。

4月16日

・来週ウクライナに搬入するための医療パックを大量に購入する必要がありワルシャワへ。
・日本円で400万円を超える大規模支援物資だが、残念ながらこの額になると日本の口座から一度に下ろせない。
・マイナンバーがないと私のポーランドの口座に直接送金できずATMで下ろすか、カードで一日の限度額ずつ払うしかない。
・日本のカードがATMに吸い込まれたまま戻ってこなければ終わりなので毎回はらはらする。

・店でウクライナ人女性2人に会った。
・彼女たちはウクライナにいる父親とオンラインで話しながら店内の腰につけるカバンを見ていた。
・父親とサイズなどを話し合い、購入してウクライナに送るそうだ。
・彼女たちが買うことにしたのは350ズロチ(約10,000円)の腰につける鞄だった。

・私もその会話に入り、ウクライナにいる彼女たちのお父さんと話した。
・「ウクライナ人って本当に男性もいるんだ」
・それがまず私が感じた印象だ。
・この1ヶ月半、ウクライナ人に会わなかった日は1日もない。
・ただ私が会ってきたのは女性と子供たちだけで、男性には全く会っていない。
・そのためウクライナ人男性がどこか、ウクライナ人のイメージからほとんど消えてしまっている。

・そのお父さんに応援しているということ、生き延びること、そして日本はウクライナと常に共にあることを伝えた。
・彼女たちの名前もお父さんの名前も知らない。
・店を出て、ウクライナで祖国を支えている男性たちをしっかりと隣国から支えていかなければならないという気持ちを新たにした。
・もちろん支援疲れは私も感じている。
・しかしウクライナではもっと大変な状況にいる人達がいて、私たちはその後方の後方のそのまた後方支援をしているに過ぎず、とても必要とされている武器も買っていない。
・彼らが希望を失わないようにするために、後方の私たちが息切れを起こしている暇はない。

・戦争が50日を超えました。こちらの状況を数字で整理します。

・現在までにウクライナからポーランドに避難した人の数:276万人以上(単純に考えるとこれはポーランドにいる約14人に1人)
・ここ数日の入国者:約2万5千人/日
・ウクライナ帰国者:約87万人

・ポーランドでマイナンバーを取得したウクライナ人数:84万6000人(つまり今でも入国者の約3割のみ)ちなみに私の家にいた避難家族は取得後一時帰国中

・マイナンバー取得者における女性と子供の割合:96%

・仕事を始めたウクライナ人数:約6万人

・ウクライナ国外避難民数:500万人以上(2015年1年間に欧州に入った中東やアフリカからの難民数は183万421人)

・ウクライナ国内避難民数:約710万人

・日本に到着した避難民数:約400人

日本よりたくさんの剣玉を送っていただきました。まずはウクライナの子どもたちも通っているポーランドの小学校でワークショップをと計画を進めていますが、最終的には平和になったウクライナの小学校で子ども達に触れてもらい、主にウクライナの小学校に寄贈させていただきたいと思っております。
小山さんを初めEZO Kendama Collectiveのみなさん、本当にありがとうございました。けん玉の数より多い子どもたちの笑顔、必ず作ってまいります。

・イースターの日曜日。ワルシャワ友人、同じ街に住むウクライナからの友人とその娘を呼んで家でイースターエッグ作り。

・イースターは家族が集う休日だが、ウクライナに父や息子達を残してきた人たちにとってはそんな祝日とは程遠い。ポーランドも春が近いが、花が咲いても私たちにとっては戦争が終わらない限り春は来ない。

・ただ、ポーランドのカトリックとは違いギリシャ正教やロシア正教の影響が強いウクライナのイースターは来週末ではあるが。

・戦争が始まったばかりの頃はポーランド人とウクライナ人ははっきりと「助ける側」と「助けられる側」という構図だった。ここには言わずとも、ある程度の立場の違いが生まれてしまう。もちろん当初から私は助ける側として協力していた在ポーランドのウクライナの友人達もいたが。ウクライナ人がポーランドに生活基盤を作り始め、一定数のウクライナ人が「助ける側」に回っている。同時に立場の違いが解消され始め、助け合う「友人」も増えている。今日来た母子。母は本当に私たちのいい友人で一緒に旅行したいとも話している。子どもの方もうちの子どもたちと一緒に遊んでいる。

・一見これは日常のようであるが、戦争が生み出した日常であり、ウクライナではそんな「日常」を奪われ続けている人々がいることは常に頭の中にある。

NPO法人SPINのOne Love ウクライナプロジェクト、後日私もオンラインで登壇致します。今はマリウポルが陥落してしまった場合、そこでブチャよりも酷い惨劇が繰り広げられることを1番心配しています。支援物資を送って今まで繋がってきた命がまだそこにはたくさんあるんです。引き続きどうぞウクライナに関心持っていただければと思います。

4月18日

アメリカのSketch Book School代表よりウクライナのためにと多くのアートをいただき、こちらにいる皆さんに配っています。世界的なウクライナ支援の動きによく感動させられます。

朝、ワルシャワのホテルにて在リトアニア日本国大使館の尾崎日本国全権大使と面会する機会をいただいた。避難民問題と日本での受入などについて率直にお話し。
パンデミックでずっとリトアニアに行けておらず、今年こそはと思っていたが結局戦争というもっと深刻な要因で現在は全て白紙。

本日はワルシャワにて面会3件と大規模医療支援物資(今週木曜ウクライナに運び込む)の一部支払い。尾崎大使からはリトアニアのチョコレートを、日本からいらっしゃった方からはたくさんのお茶などいただいた。日本になかなか帰国できないのでとても助かる。

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