視覚社会学の展開
北澤 裕(著)
A5判 403頁 並製
価格 4,200円+税
ISBN 978-4-86251-235-2 C3036
内容
各章の内容を簡単に要約すると、見ることの構成的な意義は何を見るのかによって異なってくる。したがって、第一章では「イメージ」を見ることに焦点を合わせ、現実とは既成の事柄ではなくイメージを見ることによって構成されるという点を、イメージの現実からの遠のきと呼び戻しという動的特性、およびイメージが含み持つレトリックの役割、さらにはイメージを見ることと、本物とか真正なこととはいかなる関係に置かれているのかを考慮に入れながら検討している。
次の二つの章は、イメージから「現実」を見ることに論点を移行させ、現実での身体視覚的な移動が何をするのかを問うている。
続く三つの章では、一般抽象的なイメージや現実ではなく、「身振り」、「フィギュア」、「フェティッシュ」という個別特殊な事柄に視点を移し、これらを見ることの意義を追って行く。
次の第七章は、前章の効果といった見ることの因果連関を拡張し、見ることによる対象の「接続統合」について触れている。
最後の第八章では、従来の物語的自己の概念に替え、視の移動により顕現するニューラル・パターンを「挿話的自己」として立て、ニューロ・サイエンスとニューロ・フィロソフィーが唱える自己と世界との「一元論」を援用することで、内的な自己と外的な社会や世界を対立的に二分化する「二元論」を打ち消し、見ることは自己、社会、世界を相互に浸透、内属させて共に同時に同一のものとして構成することを示し、全体の内容の補強を行っている。
目次
はじめに
第一章 <夢見る瞳>と<旅する眼> 1
一.リトグラフのカイロ 2
二.プレ・トラベル:イメージを見る 4
三.タイム・マシーンとしての「イメージ機械」 12
四.イメージのレトリック 22
五.オン・トラベル:アウラ的真正性 31
六.ポスト・トラベル:グーグル・アース 41
第二章 <視覚>を眺めるーークリナメンによる他性の構築ーー 45
一.丘の上から見れば 46
二.「今宵はずっと二人きり ? ?」 47
三.「聞く」を「見て」、「言葉」を「眺める」 53
四.パレルゴンとしての廃墟 62
五.アルゴス・パノプテスの眼「フォエダス」 69
六.眼差しによる自己決定 84
第三章 凝視の廃位ーー注目の戴冠ーー 87
一.注目する眼差し 88
二.対自的な「美」と「崇高」 92
三.センチメンタルな「ピクチャレスク」 101
四.雰囲気と情動 108
五.襲来する「対象a」 113
六.メディアのアウラ 125
第四章 <器官なき身体>への眼差しーー反復・変様・回帰ーー 131
一.帝国という「劇場」 132
二.いまここを越える眼 133
三.「反復」するチョンドンの身振り 140
四.春という身振りの「変様」 151
五.視覚文化とバリでの (^_^;) 159
六.ムーラン・ルージュは「回帰」する 163
第五章 物語の視覚ーー リマソン・ループと<世界制作>ーー 171
一.フィギュアは語る 172
二.メタ・ナラティブとミラー・ナラティブ 174
三.パスカルのリマソン 182
四.視覚の「オキシモロン」と「メタレプシス」 190
五.文化の道からメスキータ 203
六.交叉と制作 211
第六章 フェティッシュの視的な効果 213
一.ドゴン族のバンディアガラ断崖 214
二.可視的<フェティッシュ> 215
三.生命化による自己の放擲 220
四.ピグマリオンの「視覚性」 229
五.「しるし」と視的効果 238
六.接続する仮面 246
第七章 接続・接続・接続…… ーー視のプラトーと脱記号ーー 249
一.音の接続統合 250
二.「シークエンス」から「プラトー」へ 251
三.「出来事」の構成、「個体」の生成、「意味」の形成 258
四.プラトーの接続 268
五.接続による「脱記号」 279
第八章 世界の自己化は自己の世界化 ーー視的一元性ーー 281
一.物質・視覚・意識 282
二.脳内モジュールとしての「挿話的自己」 283
三.アイオーンとアレゴリーとアイロニー 291
四.実的定位から存在の連鎖 304
五.「? 今日は、晴れ!」 320
あとがき 322
注 325
索引 402
著者プロフィール
北澤 裕(キタザワ ユタカ)
早稲田大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程修了。博士(文学)
早稲田大学教育・総合科学学術院教授
専門 現代社会論、視覚文化論、視覚社会学
<主な著書>
『風景の意味 - 理性と感性 -』(共著:三和書籍 2007年)、『視覚とヴァーチャルな世界 - コロンブスからポストヒューマンへ - 』(単著:世界思想社 2005年)、『市民社会と批判的公共性』(共著:文眞堂 2003年)、『クロニクル社会学』(共著:有斐閣 1997年)、『ライフスタイルと社会構造』(共編著:日本評論社 1996年)など
<訳書>
『会話分析の手法』(共訳:マルジュ社 1999年)など