深夜勤でリンパ球が激減する
ストレスと免疫の項目で、現代人が感じるストレスとは、具体的にどのようなものかを紹介しました。もちろん、本人が自覚していないストレスによっても、本人が自覚しているストレスと同様に、交感神経が緊張し白血球中のリンパ球の数と割合は減少します。
福田稔先生が勤務していた病院で、深夜勤(午前0時から午前8時30分)前と深夜勤明けの看護師さんの白血球中のリンパ球の割合と数がどう変化するのかを調べたデータがあります。
看護師さんの深夜勤は、昼夜の逆転に加えて、不眠、過労を伴うつらい勤務です。
血液検査に協力してもらった看護師さんは12名で、平均年齢は34.3歳。仮眠をとるためにいったん自宅に戻る夕方5時ごろと、深夜勤を終えて後続のスタッフに申し送りをして帰宅する前の、午前10時ごろの2回、血液検査を行ったそうです。
12名の平均は、夕方5時にはリンパ球の割合が47%で、1立方ミリメートル中のリンパ球の数が3314個ありました。ところが、午前10時ごろにはリンパ球の割合が38%で、1立方ミリメートル中のリンパ球の数が2325個に減っていました。
理想的なリンパ球の割合は35〜41%、1立方ミリメートル中に2200〜2800個くらいです。理想値よりもリンパ球の割合、数ともにかなり多かった看護師さんたちも、激務によってリンパ球の割合、数ともに激減しています。
意識して副交感神経を高める
夜勤がいかにストレスになるかは、血液検査の結果が物語っています。
潰瘍性大腸炎やクローン病など交感神経緊張の持続から起こる病気の患者さんには、症状の悪化が起こらないよう、できるだけ夜勤のないような仕事を選ぶようにアドバイスしている専門医もいます。
このように、ストレスによって交感神経が優位となってリンパ球が減り、免疫は低下します。ただし、深夜勤明けの看護師さんでも、家に帰ってぐっすりと休めば自律神経のバランスも元に戻り、低下した免疫も高まります。
しかし、介護や家族関係の悪化などの事情によって十分に休むことができず、交感神経の緊張が持続すると生活習慣病などを発症しやすい状態になります。
ストレスが続いたときには、休息したり上手に気分転換をはかったりして、交感神経側に偏ったバランスを副交感神経側に戻して、低下した免疫を元に戻しましょう。
副交感神経を優位にするには
では、どのようにしたら副交感神経を優位にすることができるのでしょうか。副交感神経が優位な状態は、体温は高く、血行がよく、呼吸はゆっくりとした状態です。
このような状態をつくり出せば、交感神経緊張状態から副交感神経優位の状態に変えることができます。お風呂に入ったり暖房を入れたり軽い運動をしたり、温かい飲み物を飲んだりすることなどで体を温かくしましょう。体操や乾布摩擦などで血行をよくすること、意識して呼吸をゆっくりとすることも副交感神経を優位にします。
オフィスでも、冷房を控えたり暖房を入れたり、ときには席を立って軽い体操をしたり、お茶を飲んだり、深呼吸をすることは十分できるはずです。
食べることも副交感神経を優位にします。忙しいときでも、立ち食いソバなどで5分ですますのではなく、できるだけゆっくりと食事をとるようにしましょう。
また、甘い物も副交感神経を優位にします。イライラしたときなどに、適度に甘い物を食べるのはお勧めです。ただし、甘い物の取り過ぎはよくないので、過度にならないように注意してください。
お酒も、少量なら副交感神経を優位にします。ただし、量が過ぎると交感神経緊張になります。人によって違いますが、日本酒なら1合半くらいまでは副交感神経を優位にします。やけ酒やグチばかりの酒はよくありませんが、たまには仕事帰りに軽く飲むのもいいでしょう。
病気を防いだり治したりするには、ストレスによって交感神経の緊張が持続しても、副交感神経を優位にするように自分で工夫し、自律神経のバランスが偏らないようにすることが大切です。交感神経緊張が続いていると感じたら、意識して副交感神経を優位にする工夫をしてください。
副交感神経を優位にするのは、だれもが自分でできることです。先に述べたことを実行してください。
また、「爪もみ」「体を温める」「入浴」「呼吸法」「笑い」など自分で手軽にできて副交感神経を優位にする方法もあります。