イギリスの社会とデザイン
モリスとモダニズムの政治学
菅 靖子 著
A5判 / 472ページ / 上製
定価:4,700円 + 税
ISBN978-4-7791-1129-7(4-7791-1129-3) C0070
他国へのデザイン・コンプレックスを抱え、「悪趣味」に悩むイギリス。《ウィリアム・モリス》と《モダニズム》を軸に展開する、近現代イギリスのデザイン・表象文化史。デザインと産業、国家権力の関係を明らかにする。図版多数。
(社)日本図書館協会 選定図書
目次
■第1部 デザイン・コンプレックスの国イギリス
▼第1章 「悪趣味」なイギリス〜装飾美術博物館の「戦慄の間」
博物館と趣味の体制化
趣味と道徳〜ヘンリー・コールの活躍
国家経済とデザイン
『ジャーナル』とデザインの理論化
大英博覧会と装飾美術博物館ほか
▼第2章 「美術製品」の周縁〜マンチェスターの芸術文化振興とデザイン学校
マンチェスター・デザイン学校の設立
キャリコ批判とエドマンド・ポター
芸術文化都市の試金石〜英国美術名宝展
パリ万国博覧会での不振ほか
▼第3章 住まいにみるイングランドの表象〜モリス、アーツ・アンド・クラフツと室内装飾の消費文化
ウィリアム・モリスと様式
住まいのイングリッシュネス
ファッションとしての室内装飾と女性雑誌
「理想の住まい」展への道ほか
■第2部 アーツ・アンド・クラフツとモダニズムのはざまで
▼第4章 ギルドと機械と手工芸〜C. R. アシュビーの産業社会への挑戦
アーツ・アンド・クラフツ運動の新世代
ラスキンとモリスの影響
フランク・ロイド・ライトとの出会い
産業デザインと品質基準ほか
▼第5章 「アーツ・アンド・クラフツ」から「デザイン・アンド・インダストリーズ」へ〜デザイン・アンド・インダストリーズ協会(DIA)とモダン・デザインの理論と実践
「古き良きイギリス」対モダニズム
ドーランド・ホールとロイヤル・アカデミー
バートラムのデザイン論ほか
▼第6章 伝統とモダニズムの共生〜アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会とスウェーデン
イギリス・スウェーデン間のデザイン交流
1920年代のアーツ・アンド・クラフツ展覧会協会
「スウィディッシュ・モダン」の勝利〜ストックホルム展
「ようこそ機械よ!」〜アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会の方針転換
▼第7章 「イングリッシュ」・モダンの広報戦略〜ヒール商会にみるモダニズムの馴化
正統化されるモダニズム
広報戦略の発達〜19世紀のショールームと商品カタログ
ヒール商会の復元家具
マンサード・ギャラリーほか
■第3部 国家とデザイン
▼第8章 「趣味の浄化装置」からの脱却〜英国産業美術協会(BIIA)とデザイン政策
デザインへの国家介入
第一次世界大戦前後の動き
〜H. リュエリン・スミスとC. H. スミスとの出会い
逓信省と電話ボックス
運輸省と道路標識
「薄い財布のための英国産業美術」展と「バリー・コレクション」ほか
▼第9章 モダニズムの演出技法〜ライマン産業・商業美術学校と展示デザイン
美術・産業カウンシルとパリ万国博覧会
ベルリンのライマン・シューレ
バウハウスとの関係
イギリスのデザイン教育論とライマン・シューレの評判
「プレゼンテイションと展示に関する小委員会」ほか
▼第10章 デザイン改革思想の受容と階級〜モリスから英国祭へ
労働者向けの「モダン」な住まい
COIDの「デザイン・クイズ」
「成功できる英国」展での世論調査
「英国祭」とナショナル・スタイルの創造ほか
■第4部 ウィリアム・モリスの遺産
▼第11章 モリス以降のモリス商会
文化遺産としてのモリス
モリス商会の経営〜マリリエとベンスン
美術監督J. H. ダールの役割
マートン・アビーへの訪問者〜本間久雄ほか
▼第12章 レッド・ハウスの一世紀半
チャールズ・ホームとレッド・ハウスの「聖化」
ホームと日本
戦後のレッド・ハウスとウィリアム・モリス協会
「ヘリテージ」議論の高まり
ナショナル・トラストとモダニズム
著者プロフィール
菅 靖子(スガ ヤスコ)
福岡県出身。東京大学教養学部卒業(イギリス文化、表象文化論を研究)。同大学大学院博士課程単位取得満期退学。同大学院在学中英国ロイヤル・コレッジ・オブ・アートに留学。ロイヤル・コレッジ・オブ・アート博士課程修了(Ph.D)。埼玉大学教養学部講師、助教授を経て、現在、津田塾大学助教授。ロイヤル・ソサイエティ・オブ・アーツのフェロー(FRSA)。専攻は近現代イギリス史、デザイン史。
訳書に『パステルカラーの罠—ジェンダーのデザイン史』(ペニー スパーク(Penny Sparke)、菅 靖子 門田 園子、暮沢 剛巳 (共訳)、りぷらりあ選書、法政大学出版局、2004)『アート、デザイン、ヴィジュアル・カルチャー—社会を読み解く方法論』(マルコム バーナード(Malcolm Barnard)、永田 喬、菅 靖子(共訳)、アグネ承風社、2003)がある。