ホロコーストを生き抜く
母の伝記と娘の回想
The Daughter Who Sold Her Mother : A Biographical Memoir
イレーナ・パウエル 著, 河合 秀和 訳, 早坂 眞理 翻訳協力
A5判 / 445ページ / 上製
冊子版価格:4,600円 + 税
電子版価格:2,500円(税込)
冊子版:ISBN978-4-7791-2428-0 C0022
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ホロコーストに関する回想記や研究書は
多数あるなかで、本書は異色の一冊である。
生まれたばかりの乳飲み子を抱えた一人の母親が
「死に神を騙し抜いて生き延びた」話をことあるごとに
娘に語り続けた。
確執と絆の複雑に絡み合う戦後の母娘生活……
本書は著者イレーナの個人史の中で描き出される
母親の言葉を通して描き出された
“記憶に留めるべき悲劇の時代”の証言である。
また、ワルシャワ大学で日本語と日本文化を学び、
オックスフォード大学とシェフィールド大学で
日本語と日本文学を教える教師である著者の、
ある意味では日本人への“歴史認識”についての
メッセージでもある。
目次
まえがき
プロローグ──墓碑に記録された生涯の旅路
戦 前
I 母のタルタクフを求めて
タルタクフ──ガリツィアのユダヤ人町
祖父アーロンと祖母スプリンツェ
家族の家 ほか
Ⅱ 母の若い頃
若気の反抗
少数民族問題──ウクライナ人とユダヤ人
クラクフでの貧乏と友情 ほか
戦 争
Ⅲ ソ連支配の幕間劇
幻滅
最初の疑惑
共産主義の天国〈父ロメクと母サルナの物語〉
帰郷 ほか
Ⅳ ナチの占領──猛攻
ルヴフ、1941年6月──母性と戦争
ルヴフの飢餓
壊れた乳母車──ジュウキェフの物語
ルヴフ・ゲットーでの一か月 ほか
V ナチの占領── 一人打って出る
三枚の写真と一通の手紙
「お前はゲシュタポの手に落ちた」
──ジェシュフ・ゲットーへの旅
デンビツァの鉄道の駅(1943年春) ほか
Ⅵ 解 放
ボレク村からの逃亡
クラクフ、1945年冬──最初の自由の味
最初の生存者たちの話 ほか
戦 後
Ⅶ ドイツ人撤退以後のシロンスク地方
私の最初のクリスマス
ドイツ人仕立て屋のハンガー
失われた天国──極秘のパレスチナ旅行 ほか
Ⅷ 母に見守られて──子供時代の光景
医療管理の下で
愛犬ボニー──私の幸せの瞬間
母親としての献身ぶり ほか
Ⅸ 目撃した歴史
スターリンが死んだ日
波乱の年、1956年──最初の政治的転換
1956年のイスラエルでの夏休み
政治的自由化の弱点、
あるいは「私はいかにして母と別れたか」
Ⅹ 父の保護の下で
成人を目指して
私の家出
イスラエルに母を訪ねる
新移住民
「お前はホロコーストの中では、
一日も生きていけなかっただろう」
Ⅺ 旅立ち
私のオックスフォードへの旅立ち(1967年)
ワルシャワとオックスフォード(1968年)
父のアメリカへの旅(1968─ 69年)
母のポーランド退去(1969年)
ワルシャワに別れを告げる(1969年)
Ⅻ そしてその後──エピローグに代えて
父の死亡記事
晩年の母の肖像
母だけの部屋
高齢化とトラウマについての省察
日本の読者のみなさまに──著者あとがき
訳者あとがき
著者プロフィール
イレーナ・パウエル(イレーナ パウエル)
Irena Powell.
オックスフォード大学、シェフィールド大学で
日本語、日本文学教師。
著書に
「Writers and Society in Modern Japan」
(Kodansha USA Inc.1983年)
河合 秀和(カワイ ヒデカズ)
かわい ひでかず
学習院大学名誉教授。
著書
『トックヴィルを読む』
(「岩波セミナーブックス」岩波書店、2001年)、
『チャーチル ―イギリス現代史を転換させた一人の政治家
増補版 中公新書』(中央公論社、1998年)、
『ジョージ・オーウェル (イギリス思想叢書) 』
(研究社出版、1997年)ほか
訳書
J・L・ガディス『冷戦―その歴史と問題点』
(彩流社、2007年)
J・グレイ『バーリンの政治哲学入門』
(岩波書店、2009年)
バートランド・ラッセル『ロシア共産主義:新装版』、
バートランド・ラッセル『ドイツ社会主義:新装版』
(共にみすず書房、2007年)、
エリック・ホブズボーム『わが20世紀・面白い時代』
(三省堂、2004年)ほか多数。
早坂 眞理(ハヤサカ マコト)
Makoto Hayasaka.
はやさか まこと
東京工業大学名誉教授。
著書に『イスタンブル東方機関』(筑摩書房)、
『ウクライナ』(リブロポート)、
『革命独裁の史的研究』(多賀出版)、
『ベラルーシ』、『リトアニア』(彩流社)などがあり、
翻訳書に『憐れみと縛り首』(平凡社)、
『スラヴ世界』(彩流社)などがある。