語り継ぐ戦後思想史
体験と対話から
清水 多吉 著
四六判 / 216ページ / 上製
冊子版価格:2,200円 + 税
電子版価格:1,900円(税込)
冊子版:ISBN978-4-7791-2556-0 C0021
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戦中生まれの社会思想家が語る体験と知的交流の足跡!
昭和が終わり、平成が代替わりしようとしている現在、
安穏に見える無関心の人たちに支えられた民主主義政治が
成り立っている。
かつて世界を二分した熱い戦争の悲劇から、
冷たい戦争の時代を経る過程で、さまざまな思想の葛藤があり、
それに伴う行動があった。
今、世界の政治は
いわゆる「ポピュリズム」(大衆迎合主義)の傾向を強め、
ナショナリズムと分断に誘うリーダーが幅を利かせている。
社会主義体制は内的に自壊したが、
ファシズムは軍事的に敗れたのであり自壊したのではない。
種子がある限り蘇る可能性があるのだ。
本書は、新時代への危惧と次世代への問いかけを含む好著である。
目次
はじめに──忘れられて行く価値 忘れられない価値
第一章 「転向」の諸相
第一節 様々な獄中体験
第二節 ゴーリキーの不可解な死
第三節 いわゆる「転向」「コロビ」
第二章 戦争直後の世代
第一節 『新日本文学』vs.『近代文学』
第二節 「わだつみ世代」の反応
第三節 更に「遅れてきた世代」の受けとめ方
第三章 「自同律の不快さ」
第一節 つまり「私が私であることのこの不快さ」
第二節 「異化作用」
第三節 「ハムレット」劇を例として
第四節 エルンスト・ブロッホ訪問
第五節 フランクフルト大学を尋ねて
第四章 叛乱の季節
第一節 西欧の「学生叛乱」
第二節 日本の東大・日大闘争
第三節 西欧の叛乱学生の資質
第四節 ルガーノ湖畔にホルクハイマー訪問
第五節 『啓蒙の弁証法』の読み方
第六節 テロ事件に直接遭遇
第五章 ニューヨークからミュンヘンへ
第一節 「寺子屋教室」の思い出
第二節 ニューヨーク・ホウフストラ大学での講義体験
第三節 ピストル武装の学生に守られてのニューヨーク見物
第四節 ワーグナーを求めてバイロイトへ
第五節 シュタルンベルクにハーバーマスを尋ねて
第六章 「権力」への問い
第一節 福本和夫、再び
第二節 ルーマンvs. ハーバーマス
第三節 ホネットの『権力の批判』
第四節 フーコーの微視的「権力論」
第五節 フランス哲学への問い
第七章 社会主義体制の自滅
第一節 ソ連での不快な思い出
第二節 東ベルリンでの恐怖の思い出
第三節 東欧・ソ連社会主義体制の自滅
第八章 ベルギーのルーヴァン大学から再びベルリンへ
第一節 リオタールあるいはドゥルーズ批判
第二節 ベルギー、ルーヴァン大学での意見発表
第三節 再び「壁」崩壊後のベルリンへ
第四節 かけがえのない私の友人 廣松渉氏、
藤原保信氏の死
第五節 ドゥルーズ、レヴィナス、ルーマンの死。
そしてわが友 矢代梓氏の死。
終 章 テロとともに始まった二一世紀
著者プロフィール
清水 多吉(シミズ タキチ)
しみず たきち
立正大学名誉教授。
著書:
『戦争論入門』(日本文芸社、1974年)、
『ヴァーグナー家の人々──三〇年代バイロイトとナチズム』
(中公文庫、1999年)、
『西周──兵馬の権はいずこにありや ミネルヴァ日本評伝選』
(ミネルヴァ書房、2010年)、
『1930年代の光と影 増補』(河出書房新社、1986年)、
『クラウゼヴィッツと戦争論』(共編著、彩流社、2008年)、
『ベンヤミンの憂鬱』(共著、筑摩書房、1984年)ほかがあり、
訳書:
クラウゼヴィッツ『戦争論』(中公文庫ビブリオ、2001年)、
ユルゲン・ハーバーマス『史的唯物論の再構成
叢書・ウニベルシタス』(共訳、法政大学出版局、2000年)、
ユルゲン・ハーバーマス『討議倫理』(共訳、法政大学出版局、
2005年)、
M.ハイデッガー 他『30年代の危機と哲学』
(共訳、平凡社ライブラリ、1999年)、
ユルゲン・ハーバーマス『社会科学の論理によせて』
(共訳、国文社、1991年)ほかがある。