その視点と方向を問う
祖田 修(著/文)
四六判 286頁 上製
定価 2,500円+税
ISBN 978-4-86251-089-1 C3061
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内容
環境問題、人口と食料、食品の安全安心、
農業経営の担い手不足、農林水産業の多面的機能、
鳥獣害問題、都市と農村のあり方、
食農教育、農産物貿易交渉の現実……
これらの本質を解きほぐし、総合し、再構築を目指す。
目次
第1章 農業の発展と問題
─人は飢えずに環境を守れるか
1 人口の爆発そして物的欲望の爆発
農業革命と産業革命/農産物消費上の変化/マルサスの復活?
2 農業の工業化(集約化)─農業生産の内延的拡大
農業の近代化と発展
3 農地拡大─農業生産の外延的拡大と問題/農地拡大と森林開発/さらなる食料需要─中国、インド他/農業開発の可能性/
4 二つの食料危機─一九七三、二〇〇八年/二〇〇八年食料危機が意味するもの/二つの食料危機の違い/世界農地争奪戦の始まり
5 食料増産の結果何が起こるか
地球温暖化と環境問題/農業開発と環境問題/人は飢えずに環境を守れるか
6 農業・農村の向かうべき目標─持続的地域の形成と連鎖
農業・農村の価値目標/個性的持続的地域の形成/
第2章 食の崩壊と再生
─食の世界に何が起こっているか
1 二〇〇八年の食料危機と国民の選択
2 食への不安の内容
農薬の起源と必要性/化学肥料の多用と土の死/食品添加物と飼料添加物/鳥インフルエンザ、BSE/数々の食品偽装/産地偽装/遺伝子組み換え作物の食用化
3 飽食の果てに
日本の食の変化/食の乱れ/子供の食の乱れ/若者たちの食の乱れ/少ない夕食の団欒
4 和食(日本型食生活)の行方
学校給食が残したもの/和食の人気
5 食の再生に向けて─まず「地産地消」から
食の再生運動/食育の歴史と現実/地産地消の進化へ/JA、先進農家中心の直売店/生協、企業等の産消コーディネート型/「六次産業」の総合農場
第3章 農家像の変容と論理
─誰が農業を担うのか
1 戦後の農地改革の意義─所有は砂を変えて黄金となす
2 前期高度成長下の農家の「不安定兼業化」
高成長を支えた稲作社会の律儀な労働力/不安定兼業農家の増大─農家の行動論理/三〇アール保留の論理
3 経済の国際化と日本農業の苦吟─アメリカ農業と日本工業のはざま
減反政策の衝撃
4 後期高度成長と「安定兼業農家」の増大
安定兼業化と農地維持的農業化/一五アール保留への変化と意味
5 日本農業経営の再構築
日本農業の多様性/意欲ある農業者への重点的支援/市民農園と都市民の楽しみ/農業類型間の相互補完/直接支払い制度の方向
第4章 日本農業経営の再生
─「生涯産業」としての農業
1 農業の特性
工業との違いと保全/「生涯産業」としての農業
2 新たな視点からの農業経営の確立/生涯所得から見た農業/退職金の先貰い/農業には定年がない/宵越しの金を持つ/年所得五二七万円の条件
3 複合化の重要性
複合経営の追求─ヨコの複合化/複合経営の追求─タテの複合化
4 農業に生きる人と地域
渥美半島の施設園芸農業/川上村の若者高原野菜
5 農業は生涯働ける産業
退職後の農業取り組み─地域のために/長野信正─家族の中で/農業新規参入の場合
第5章 農林業の多面的機能論の現実
─市場の社会化へ
1 多機能空間としての農山漁村
農業・森林の多面的機能論の背景/市場の失敗としての多面的機能問題/農業・森林の多面的機能/日本農山村の地域的特性
2 多面的機能論は世界に受け入れられているか
議論の展開過程/農空間に虚無を盛る/論理の転倒/地域視点から見た各国の多面的機能論との関連
3 多面的機能の内容と評価
評価の主観性と幅/水産業の多面的機能/多面的機能論への期待
第6章 害獣たちと人間
─形成均衡の場所へ
1 害獣化する野生
クマ騒動と鳥獣害/鳥獣被害の実態
2 動物の権利、人間の権利
「発展」と人間中心の立場/ディープ・エコロジーの立場/第三の立場─農業・農学
3 鳥獣と人間のせめぎあい─三つの事例
動植物と人間の三つの関係/事例1─中国山地における農業の理想と現実/事例2─跳梁するエゾシカの群れ/事例3─網走支庁のシカ頭数管理
4 形成均衡の場所へ─二つの自然像を超えて
ダーウィンの自然像/今西錦司の自然像/思想を背負う人間/動態と静態の統合/共生・競争・共存/形成均衡の場所へ
第7章 中小都市と農村の結合
─開放性地縁社会へ
1 都市・農村論の系譜
2 田園都市論の展開
ハワード田園都市論の背景/田園都市の設計/シュミットの「産業生活田園都市」論
3 ドイツの多数核分散型空間論の成立
クリスタラーとレプケの分散論/ヨーロッパ二つの空間類型
4 都市・農村一体の地域振興
”居つきの工業化”/通勤可能性の追求─バーナーの農村都市論/農村間格差の是正/日独の国土政策比較
5 日本の都市・農村政策
地域活性化への道/総合的価値の追求/日本における多数核分散型空間の形成/開放性地縁社会へ
第8章 作業教育、食農教育の思想
─菜園の力(レプケ)
1 子供たちに何が欠けているか
子供達のSOS/食べるということ─生きるものの宿命/感動・祈り・感謝/子供たちはなぜ切れる/作り・育てるということ
2 作業教育の思想
作業教育思想の系譜/ペスタロッチの思想/デューイ、ベイリの思想
3 農作業の総合的人間性
農作業の循環性/農作業の多様性/農作業の相互性・自己創造性
4 ものを育て作ることは、自分を育て作ること─「菜園の力」
市民農園─見る緑から作る緑へ
ドイツのクライン・ガルテンと「庭園都市」
第9章 自由貿易の限界と持続的地域の形成
─場所性の復権
1 農業立国か工業立国か、それとも商業立国か
2 農業における市場の失敗
3 農産物自由貿易論の限界
生態環境の破壊/場所性の復権/過去的幸福としての経済的幸福
4 三つの価値とアグリ・ミニマム
経済・生態環境・生活/新たなアグリ・ミニマム論
5 持続的地域社会の形成と世界的連鎖
第10章 農業と文明のゆくえ
─「着土」の世界へ
1 文明の現実
2 文明の興亡と大地自然
3 いくつかの大きな文明の帰結
オリエントの文明/グレコ=ローマ文明
4 現代文明の展開と帰結
ヨーロッパ近代文明の登場/ヨーロッパ工業文明の世界化/シュペングラーの『西洋の没落』/都市と農村─土から離れ、滅びる文明/地球全体を蚕食する物欲と食欲
5 大地・自然をベースにした「着土」の文明へ
参考文献