東日本大震災が残した課題
諸外国の災害対処・危機管理法制
三重中京大学教授 浜谷英博
防衛大学校教授 松浦一夫 編著
新正幸 新井誠 井口文男 永野秀雄 宮坂直史 山崎元泰 共著
A5判 並製 275頁
価格 3,500円+税
ISBN978-4-86251-130-0 C3031
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内容
国民の生命と財産を守る制度設計とは。災害対策において、わが国が抱える制度的課題の徹底分析と諸外国の具体的制度を丁寧に紹介。政治・行政に携わる者や研究者はもちろん、すべての国民が議論の参考にすべき、実効性の高い理論と実践事例を収録している。
目次
はじめに
第I部 日本の危機管理体制の課題
第1章 日本の危機管理─3.11と核災害
はじめに
I 日本の危機管理体制・意識の変遷
1 転機となった1995年
2 9.11テロ後に何が変わったか
3 3.11以前の核セキュリティ
II 3.11以前の核関係の訓練
1 訓練の意義
2 原子力防災訓練・原子力防災総合訓練
3 核に関する国民保護訓練等
4 訓練の問題点
III 3.11以後の対応─クライシス・コミュニケーション
IV 3.11後の展開
1 核セキュリティ対策
2 事故調査委員会
おわりに─提言と教訓
第2章 原子力災害対処にかかわる我が国の現行法の問題点
はじめに
I 憲法と原子力法制
1 憲法と原子力の平和利用
2 原子力基本法を根幹とする原子力法の構造
3 原子力災害対策特別措置法の特質
II 福島第一原発事故の経緯と関係諸機関の対処について─住民保護を目的とする避難指示、警戒区域設定等を中心に
1 緊急災害対策本部の設置と原子力緊急事態宣言の発出
2 避難等の指示とその範囲拡大の経緯
3 「計画的避難区域」、「緊急時避難準備区域」設定の方針
4 「警戒区域」の設定
5 「計画的避難区域」、「緊急時避難準備区域」の設定
6 「特定避難勧奨地点」の設定
III 原子力災害対処法制の問題点と課題
1 避難指示等の対処の特質と問題点の所在
2 制度上の問題点
3 問題点の基因と背景
4 現行法制の課題
5 もう一つの選択の可能性─原子力基本法の改正と憲法
おわりに
第3章 東日本大震災と危機管理の欠落─課題と立法提言
はじめに
I 東日本大震災における政府対応の課題
1 対応の不作為
2 その他の課題
II 緊急事態法制の遅滞と課題
1 日本国憲法制定過程の特異性
2 「強い国会・弱い内閣」の克服と内閣府設置法の制定
III 立憲主義憲法と国家緊急事態
1 法治体制と国家緊急事態
2 90年以降制定の諸外国憲法に見る緊急事態対応条項の現状
IV 日本国憲法の各種改正試案と国家緊急事態条項
1 内閣憲法調査会報告書(1964年)における非常事態条項
2 近年における憲法改正試案
3 衆議院・参議院の「憲法調査会報告書」における緊急事態条項
V 国家緊急事態への対処と民主統制
1 災害緊急事態の布告と国会関与の課題
2 国会拒否権制度の導入
VI 住民保護と国民保護法上の課題
1 国と地方公共団体の責務
2 国および地方公共団体と国民保護
3 国家緊急事態と国民保護の課題
おわりに
第II部 諸外国の災害対処・危機管理法制とその最近の動向
第4章 米国における災害支援─特に軍の果たす役割とその法的位置づけについて
はじめに
I 軍の災害救助等への動員に関する規制
1 連邦憲法上の位置づけ
2 州軍の動員とその地位
3 州軍の他州への災害援助参加に関する特別法
4 民警団法と暴動対策法の適用関係
II スタフォード法
1 スタフォード法の概要
2 スタフォード法と民警団法・暴動対策法との関係
III 緊急事態に対応する管理制度
1 国土安全保障会議の創設と役割
2 国土安全保障指令第5号に基づく緊急事態管理制度
3 国土安全保障指令第8号
IV 災害に備える国家演習
1 国家演習プログラム
2 国防総省による国家演習プログラムへの参画
3 北部コマンドの役割
おわりに─わが国への提言
第5章 英国の災害対処・危機管理法制─21世紀型リスクへの対応
はじめに─「民間防衛」から「レジリエンス」へ
I 英国政府のリスク認識
1 自然災害
2 大事故
3 悪意ある攻撃
4 事業継続マネジメント(BCM)
II 緊急事態対処の法的枠組み
1 民間緊急事態法の概要
2 特徴と分析
III 緊急事態対処の制度的枠組み
1 英国政府の危機対応メカニズム
2 軍の派遣制度
おわりに─英国と日本
第6章 イタリア憲法と防災システム
はじめに
I イタリア憲法と緊急事態
1 イタリア王国憲章の場合
2 イタリア王国時代の防災活動
3 イタリア共和国憲法の場合
4 イタリア共和国時代初期の防災活動
II 防災組織とその活動
1 災害事態の定義とその類型化
2 防災組織
3 防災全国機構の実動機関
4 災害の予測・予防活動
III 各防災主体の権限
1 序
2 防災活動の指揮・企画及び計画
3 通常災害の場合の主体とその権限
4 大規模災害事態の場合の主体とその権限
5 激甚災害の場合の主体とその権限
おわりに
第7章 フランスにおける危機管理の憲法構造と災害対策法制
はじめに
I 国家緊急権と国家防衛の憲法構造
1 国家緊急権の憲法構造
2 国家防衛の憲法構造
II 災害対策と「国家安全(民間防衛・民間安全)」の法関係
1 「民間防衛」と「民間安全」の法概念
2 両者の関係
3 近年の傾向
III 災害対策と行政組織
1 国レベルの行政組織と権限
2 地域レベルの行政組織とその権限
IV 災害における住民保護
1 国主導の住民保護─総合的ORSEC計画
2 ORSEC計画の概要
2 各コミューンの保護計画(le plan communal de sauvegarde)
3 県・防衛管区・海洋の各ORSEC計画
4 消防と医療の災害救助対策―「赤い計画(plan rouge)」から「多数犠牲者のORSRC計画」へ
おわりに─日本との比較と日本への示唆
第8章 ドイツの災害対処・住民保護法制─平時法と戦時法の交錯
はじめに
I ドイツ基本法が定める国家緊急事態
1 対外的緊急事態(防衛緊急事態)
2 国内的緊急事態(治安緊急事態・災害緊急事態)
II 災害対処と住民保護─連邦とラントの役割分担と協力
1 住民保護に関する立法権限と法執行権限、経費負担の原則
2 災害事態と災害防護官庁、部隊・施設
3 官庁間協力の法的枠組
III 民間災害救援ボランティア組織との協力
1 主要民間救援組織
2 義務兵役制と災害救援ボランティアの要員確保の関係
IV 災害防護のための住民の協力義務と基本権制限
1 住民の義務
2 基本権の制限
V 脅威認識の変化と住民保護体制の再編─文民保護と災害防護の融合、民軍協力
1 9・11米国テロ事件以後の住民保護の変質
2 災害対処における民軍協力と予備役軍人の活用
VI 広域危機管理訓練L?KEX
VII 原発事故を想定した対処計画の具体例─ヘッセン州の場合
1 軽微な事故の場合
2 「災害」レベルの事故の場合
3 災害対処措置
おわりに