都市と農村のはざまから現代社会を透視
祖田 修 著
四六判 245ページ 1,900円+税
ISBN978-4-86251-391-5
非正規雇用37%、一人世帯35%が生む貧困・格差・孤独。日本は戦後復興を果たして高度成長を謳歌し、世界第2位の経済大国にまで登りつめましたが、いつの間にか冒頭のような深刻な社会状況に陥ってしまいました。産業形態の変化が、農村から都市への大規模な人口移動をひきおこし、農村、都市ともにそこで生活する人々の縁と絆を変容させたのが大きな原因の一つです。そこから派生するさまざまな事象を精緻に検証、考察して人々の居場所が今後どうあるべきかを示します。
目次
はじめに
第1章 経済の波動に翻弄される若者たち
1 高成長下の若者たち
2 社縁社会からはみ出す若者たち
3 新たな縁と絆への願望
第2章 人間の居場所としての故郷
1 故郷喪失の時代
2 新たな居場所(故郷)の創造
第3章 社縁社会への道程
1 社縁社会への道程
2 社縁社会の発展と農村との関係
3 故郷を足掛かりに成長した社縁社会
第4章 心の故郷の喪失
1 高度成長下の農業・農村の変化
2 故郷であることをあきらめ、やめる農村
第5章 魂の故郷の喪失
1 宗教と寺社の衰退
2 孤立化する生と死
第6章 移動社会と多様・多極化する居場所
1 加速する移動社会
2 世界から日本へ、日本から世界へ
3 移動社会の光と影
第7章 情報縁社会の居場所
1 情報社会の深化と危惧
2 AI社会をめぐる議論の現状
3 人間の自然性、自律性
4 労働と生活の本質的転換
第8章 浮かびあがる田園生活への思い
1 私の田園“半”回帰
2 多様な田園回帰の人々
第9章 高まる田園回帰の流れ
1 都市民の田園回帰への願望と背景
2 変容する農村社会
第10章 複合縁社会の形成へ
1 「縁」の重層化・複合化
2 再生を目指す農村社会
3 田園回帰受け入れ成否の要件
4 「着土」の文化・文明へ
あとがき
主要参考文献
著者プロフィール
祖田 修(ソダ オサム)
1963年京都大学農学部農林経済学科卒業。
農林省経済局、龍谷大学経済学部、京都大学大学院農学研究科教授、放送大学客員教授、福井県立大学学長、日本学術会議第6部長等を歴任。
現在、京都大学名誉教授、福井県立大学名誉教授。
専攻は農学原論、地域経済論。