笑いが少ない人は要注意
「笑い」は、副交感神経を優位にします。笑うだけでいいので、いちばん簡単な健康法といえます。
ところが、交感神経緊張状態が続くと、なかなか笑いが出ません。なかには、ここ1カ月くらいまったく笑ったことがないという人もいるでしょう。人間関係で悩んでいる方や、働きすぎの方は、なかなか笑う余裕がありません。
「笑い」は、簡単に副交感神経を優位にする方法でもありますが、自律神経のバランスが乱れているかどうかの指標にもなります。自分自身の生活を振り返って、「笑い」が少ないと感じる人は要注意です。交感神経緊張状態が続いているのではないでしょうか。自分だけでなく、家族の「笑い」も振り返ってみてください。
「ガンやパーキンソン病などの難病の患者さんはなかなか笑いませんね。とくにパーキンソン病の人はそうですね」と自律神経免疫療法を行う医師たちは言います。
「治療を続けているうちに、まったく笑わなかった患者さんが、ニッコリと笑うようになってくる。するとよくなっていくんだ」と福田稔医師は言います。
福田先生は、患者さんの治療前の顔と、治療後の顔を写真に撮って比較しているそうです。
膠原病が「笑い」で治った
アメリカのジャーナリストだったノーマン・カズンズ氏は、自分の膠原病を、喜劇やコメディなど面白いものを見て笑って治してしまいました。
1976年に、その経過をアメリカの医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』に投稿しました。
1979年にはカリフォルニア医科大学の教授になり、笑いの効用を研究するチームをつくりました。これらのことは世界的な話題となり、「笑い」に関する研究が行われるようになりました。
ノーマン・カズンズ氏は、1949年に広島を訪れ、『4年後のヒロシマ』というルポルタージュを発表。これをきっかけに、原爆で家族をなくした400名を超える子どもたちを支援しました。
また、原爆によってケロイドを負った若い女性25名が、アメリカのマウントサイナイ病院で治療を受けることにも力を尽くしました。これらの功績で、1964年、広島市特別名誉市民の称号を受けています。
「笑い」で病気が改善
「笑い」が病気の症状を軽減することは、データによって証明されています。
喜劇、落語など、笑えるものならなんでもよいでしょう。映画やテレビを見たり して、おおいに笑ってください。
村上和雄筑波大学名誉教授の報告を紹介しましょう。
吉本興業の協力で、60歳以上の男女22名が漫才を聞く前と後で採血し、遺伝子を比較したそうです。血液の酸素を運ぶ量が増加し全身の細胞に行き渡るという遺伝子、たんぱく質の合成が盛んに行われて細胞の新陳代謝を促す遺伝子など、64の遺伝子のスイッチがオンになり、健康によい効果を生み出していたそうです。
リウマチの痛みが軽減するという、日本医科大学の吉野槙一教授の報告もあります。
女性のリウマチ患者さん26人に、林家木久蔵師匠の落語を聞いてもらったそうです。その前後で採血し、痛みの程度、インターロイキン6やコルチゾールの変化を調べてみました。
インターロイキン6とは、炎症が進行すると数値が高くなるサイトカインです。
コルチゾールとは、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンです。コルチゾールは、ストレスの指標とされる物質で、精神が緊張状態にあると数値が高くなります。また、比較のため、健康な女性37人にも参加してもらったそうです。
1時間笑っただけで、リウマチ患者さんの痛みが軽減したそうです。リウマチ患者さんのインターロイキン6の数値は、約3分の1に下がったそうです。コルチゾールの数値もほとんどの人が低下。
健康な人は、インターロイキン6もコルチゾールも最初から正常値で、ほとんど変化がなかったそうです。
「笑い」によって、ガンを撃退する、NK細胞の活性が高まったという伊丹仁朗医師のデータもあります。
男女19人のボランティアを集め、漫才や漫談で3時間笑った後、NK細胞の活性の変化を調べたそうです。活性が低かった人はすべて正常域になり、もともと正常域の人もさらに活性が高まったそうです。笑いには、短時間でNK細胞を活性化させる効果があることがわかったのです。
また、「笑い」によって分泌されるβエンドルフィンというホルモンは、痛みをやわらげる働きがあり、その効果は麻酔に使われるモルヒネの数倍だといわれています。鎮痛剤を手放せないほどの病気の人でさえ、落語やバラエティ番組などを見て1時間ほど笑った後には、全身の痛みがやわらいで楽になったという報告もあります。
「笑い」はスポーツ?
表情筋を刺激することで加齢による表情筋の衰えを防ぐことができます。「笑いジワ」を気にすることなく、おおいに笑って表情筋の衰えを防いでください。
「笑い」によるカロリーの消費は、3分半で約11kcalだそうです。同じ3分半で、水泳では約18kcal、早足のウォーキングでは約17kcalだそうです。
さらに、笑っている本人だけでなく、つられて笑う「笑いの輪」も広がっていきます。ニッコリほほえまれると、それだけで気分もよくなります。