足を組む姿勢が足のしびれや足の冷たさをつくりだす
姿勢をよくするためには、どのようにしたらよいでしょうか?
「背筋を伸ばす」「胸を張る」「あごを引く」——どれも正解です。
しかし、肝腎なのは、座るときは「坐骨の真上に頭部がある」、立つときや歩くときは「両足の距骨を結ぶ中心の真上に頭部がある」(「立ち方」「歩き方」については別項を参照)ということです。
座るときは、坐骨で座ります。左に上半身が偏っていれば、右側の坐骨結節(腰掛けるときに椅子の面に接して体重を支える場所)より、左側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。この状態が続くと、左側の坐骨結節周辺の血流が悪くなります。
反対に、右に上半身が偏っていれば、左側の坐骨結節より、右側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。この状態が続くと、右側の坐骨結節周辺の血流が悪くなります。
どちらか片側の坐骨結節周辺の血流が悪い状態が続くと、足のしびれや足の冷たさが出てきます。
足を組んで座ると、どちらかの坐骨結節に上半身の重さが偏ってかかります。右足を上にすると、左側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。反対に、左足を上にすると、右側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。
これが長年続くと、上半身の重さが偏ってかかっている側の坐骨結節周辺の血流が悪くなります。
足を組むことで、みずから足のしびれや足の冷たさをつくりだしているのです。
右足を上にしたほうが楽な方は、骨盤の位置が、右側が前に、左側が後ろになっています。極端にいえば、まっすぐ前を向いているつもりでも、骨盤は左前方を向いています。上半身をひねってみると、左側にはひねりやすいけれど、右側にはひねりにくい状態です。
この姿勢だと、右前方から押されても踏ん張れますが、左前方から押されたら踏ん張りがききません。左後方から押されても踏ん張れますが、右後方から押されたら踏ん張りがききません。
反対に、左足を上にしたほうが楽な方は、骨盤の位置が、左側が前に、右側が後ろになっています。極端にいえば、まっすぐ前を向いているつもりでも、骨盤は右前方を向いています。上半身をひねってみると、右側にはひねりやすいけれど、左側にはひねりにくい状態です。
この姿勢だと、左前方から押されても踏ん張れますが、右前方から押されたら踏ん張りがききません。右後方から押されても踏ん張れますが、左後方から押されたら踏ん張りがききません。
骨盤の向きがどちらかに偏っていると、片側だけ転倒やケガなどをしやすくなります。「左足だけぶつけやすい」「右側に転びやすい」といった方は、骨盤の向きが偏っている可能性があります。
また、せっかく整体院などで骨盤調整をしてもらっても、座り方、立ち方、歩き方を意識して変えない限り、時間がたつと長年かけて身に付いた「自分の癖」に体が戻ってしまい、効果が長続きしません。
どちらの座骨結節に負担がかかっているかわからない場合、おしりの左右の「えくぼ」を拳や棒で思い切り押してください。同じ力で押しても、負担がかかっているほうのおしりの「えくぼ」が痛く感じるはずです。
椅子に座る姿勢の偏りも足のしびれや足の冷たさをつくりだす
椅子に座るときに、左右に均等に体重をかけていても、床に着いた足が真ん中より右側にあると、左側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。反対に、床に着いた足が真ん中より左側にあると、右側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。
畳や床の上で横座りをしているときも、足を右に投げ出していると、左側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。反対に、足を左に投げ出していると、右側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。
また、パソコンのディスプレイが真正面よりも右側にあると、右に体をひねるために右側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。反対に、正面よりも左側にあると、左に体をひねるために左側の坐骨結節に上半身の重さがかかります。
上半身の重さのほんの少しの偏りでも、数カ月、数年と続くと、上半身の重さがかかった側の足に痛みやしびれが出てきます。常に「左右の坐骨を結んだ線の真上に頭がある状態」を心がけてください。
「左右の坐骨を結んだ線の真上に頭がある状態」だと、足を組もうとしても組みにくいはずです。足を組むときは、頭の位置が坐骨より前になる猫背になるか、あるいは椅子の背もたれに体重をかけて頭の位置が坐骨より後ろになる状態になっています。「左右の坐骨の真上に頭がある状態」だと、足を組むことがなくなる、あるいは少なくなります。
猫背の状態で体を安定させるためには、僧帽筋や脊柱起立筋などに過剰な負荷がかかり、肩こりや筋肉痛になります。
片方のひじを着いて座るのも、重心が偏ります。右ひじを着いて座ると、右に重心が傾きます。そのため、右の坐骨結節周辺が圧迫されます。反対に、左ひじを着いて座ると、左に重心が傾き、左の坐骨結節周辺が圧迫されます。
座り方のお手本は、幼児です。幼児は、体重に占める頭部の割合が大きく、また首や脊椎を支える筋肉も大人ほど発達していません。幼児が座るには、頭の位置を「左右の坐骨を結んだ線の真上」にするしかないのです。
幼児は、筋肉に負担をかけず、効率よく座っています。猫背にもなっていませんし、背もたれにそっくり返った座り方にもなっていません。もちろん、足も組んでいません。片ひじも着いていません。別項で触れていますが、「立ち方」「歩き方」も偏りがなく、効率がよい姿勢になっています。
「姿勢」のお手本は、幼児です。
足を開いて座ると将来「尿失禁」を引き起こすこともある
座ったときに、足を大きく開いていませんか? 足を開いて座っている方は、両方のかかとと、両方のひざを着けて座ってみてください。ぷるぷるとしませんか?
この姿勢が5分もできないようですと、将来、尿失禁を引き起こす可能性があります。坐骨の下にある内転筋(太ももの内側の筋肉)が衰えると、両ひざを着けた姿勢を取りにくくなります。
内転筋を鍛えるには、座って両ひざを着けた姿勢を取り続けることです。最初は1日に5分でもけっこうですので、両ひざを着けて座ってください。
さらに内転筋を鍛えるには、太ももの間にボールを挟んで、ギュッと閉じるトレーニングをすれば効果的です。ボールがなければ、両ひざを押しつけ合うだけでも効果があります。
また、スクワットも内転筋を鍛えるのに有効です。洋式トイレが普及するまでは、和式トイレで自然にスクワットの動作を行っていたため、知らず知らずのうちに内転筋が鍛えられていました。洋式トイレが普及した現在では、自分で内転筋を鍛えることが必要です。